ルヴァン・ゲリオン ②
Episode Ⅱ 「使徒、襲来。」
(Episode Ⅰ 未見の方は是非に)
きっとアイツの実家はトランプがなんかの拍子になくなってしまっただろう。
それもおそらくアイツの仕業だろう。
そして部屋の掃除のたんびに神経衰弱ゲームを
靴下でやっていたんだ。
小学生の靴下だから傘のマークや金色のクマのの白い靴下を部屋のあちこちに片方づつ脱ぎ散らかして、それをある日、母親の号令でペアにしていくゲームを。
そしてペアができてくうちに突然トランプが見つかって「一石二鳥だね」ってあのとぼけた顔で言うんだろうね。
さぞかし楽しかろう…。
でも言っとくけど私はアイツと暮らしてもう20年近くだけどこの神経衰弱楽しさはちっともわからないない。
靴下を片方づつ脱ぐ行為にどんな哲学があるのか?
わからないついでにもう一つ。布団の周りに5、6冊開いたたまま背表紙を表に置きっ放しにしてあるのはいったい、どこの国のおまじないなのかしら?
そう言えば同棲当初、アイツに質問した事があった。
本を同時に何冊も読むのって、こんがらないのって。1冊読み切ったら、次の本に取りかかれば?そしたらアイツこう言った。
「例えばドラマは1日1本しか見ない?違うテレビドラマを日に何本も見たら訳わかんなくなる?金八と半沢直樹北の国からとスクールウォーズを1日に見て、金八はラグビーのオールジャパンで3年B組に富良野川浜一のワルが転校して富良野にいって風力発電を作るってこんがらがる?」とまたあのとぼけた顔で答えた。
私はそのまま黙って部屋を飛び出して2日女友達の家に泊まって帰らなかった。2日後、アイツの仕事中に黙って部屋に帰ってみたら出て行った時より本が散らばってた…。
まぁ、20年も立つと半分諦めてはいる。
夫婦と言えどもわかり合えない事はある。
アイツは多分、部屋を散らかしても気にならない村の住人なのだ。でも。でもね、今年の大掃除は頑張ると珍しく自分から言ったじゃない。
アイツ、今年の自分の担当は風呂場と自分の部屋。12月の中頃には終わらせて年末はゆっくり家族で過ごそうと、最終節の帰りに車の中で…、そうか。きっと大好きな赤黒のクラブを堪能して気分が大きくなったんだろう。昔からそう言う所がある。ていうか、出だしは威勢がいい。
毎年元旦は勿論、毎月の1日は心機一転だといって布団から出てくる。
昨日だって「よし、今晩は片付けJAPAN代表だ!」って訳の分からない事を言って夕食を食べ終え意気揚々と自室に籠りだした。
もう12月も中旬は優にすぎてるもんね。私の心のざわつきが大掃除の事だと察知したんだわ。
頑張ってと一言アイツを部屋に送り出し、
私もキッチンの汚れと格闘してたらあっという間に時間が経ってて。さてアイツの進捗状況を覗きにとのコーヒーを持って行ってみたらアイツ、スマホ片手に夢の国よ。
部屋の状況はなんなら昨日より戦況が悪くなってる。
アイツに任せてたら永遠に終わらない。
ゲーム終了を告げるホイッスルなんか吹く気なんてまるでない。片付けてるうちに次の遊びに夢中になる子供。
もう、ここまできたら私が試合介入よ。
寝てるアイツを叩き起こし息子の部屋に隔離処分。一緒に枕と掛け布団を投げつけてやったらアイツ「おやすみなさい」って
息子の隣であっという間に寝出したわ。
どこまで幸せな奴なのか。
まぁ、嘆いてばかりじゃしょうがないから1日の最後の力を振り絞ったわ。
おかけで私の手にかかったらあっという間。
物をもとあった場所に戻す。どうしてこのシンプルな戦術をアイツは理解できないんだろう。あとはこの箱に集めたもんをアイツにいるかいらないかを判断させて…。
さあ私も明日は早番だから寝なくちゃ。
……。
でもなんかすっきりしないね。
アイツはどうせ明日仕事から帰ってきてとぼけた顔で「お!部屋は綺麗が一番だ!」とかいって布団に入って
片付けた本と赤黒の選手が躍動する新聞を取り出して読み始めるんだろう。そしてまた靴下を片方づつ部屋のあちこちに隠し始める。
…そう想像すると腹が立ってくる。
…この新聞。
この新聞隠してやろう。なぁにアイツなんて隠すまでもないわ。リビングに置いてあったってまるで気付きやしない。そうしてある時、アレ新聞ないって騒ぎ出して私にヘルプを求めてくる。
そしたら言ってやる…。
探して欲しかったら金輪際、靴下の神経衰弱はしませんて誓いなさい!
ってね…。
…To Be Continued